こんにちは！久屋大通店の原です。

普段ブログを書くときはひとつテーマを決めているのですが、

書きたいことを書いていたらなんだか雑然としてきてしまったので、今回は雑談ということにします。

突然ですが、この時計をご存じですか？

IWCの「パイロット・ウォッチ・ダブルクロノグラフ・トップガン・セラタニウム」(￥1,716,000)です。

名前が長すぎる上に値段もかわいくないですね。

意味としては、

・パイロット・ウォッチ……IWCの腕時計のラインナップのひとつ

・ダブルクロノグラフ……ラップタイムの計測ができる、クロノグラフの上位機種

・トップガン……アメリカ海軍の戦闘機パイロット養成学校の名前

・セラタニウム……IWC独自開発のセラミックとチタンの複合素材

ということで、

中身も外見も最先端の、パイロットウォッチの上位モデルというわけです。

高いのも納得ですね。

ですが実はこの時計、ムーブメントは完全自社開発ではありません。

「え……こんなに高いのに自社ムーブじゃないの？」と思うでしょうか？

ちなみに私は思っていました。

以前お伝えしましたが、腕時計が高くなる理由として、「自社開発ムーブメントであること」が挙げられます。

ですが、自社ムーブ搭載＝価格が高い＝より優れている……という訳ではありません。

（そもそも、腕時計において何を優れているとするか？という話にもなりますが）

実際、このダブルクロノグラフもETA社の汎用ムーブメント（バルジュー7750）をベースとしていますが、

「なんだ、完全自社開発ムーブじゃないんだ。」と言う人はいないですよね。

信頼性が歴史によって証明されている7750を基盤とし、その上に複雑機構を重ねる。

既存の技術を利用してより良いものを作るという考え方に基づいた、

いかにもIWCというブランドらしいと言うか、モノづくり屋さんらしい機械だなと思います。

「完全自社開発ムーブではない時計」という括りでぜひ紹介したいのが、

ヴァシュロン・コンスタンタン「ヒストリーク・コルヌ・ドゥ・ヴァッシュ」と、

オメガ「キャリバー321」です。

この２つを自社開発ムーブでないと言うのはものすごく乱暴なので、

どこからか怒られるかもしれませんが、許してください。

（「自社ムーブ」という言葉を、中までヴァシュロンが作ってますよ、機械もオメガが作ってますよ、

という意味とするなら、この２つはまぎれもない自社ムーブであると言えます。）

まずはヒストリークのムーブメントを見てみると、

こんな感じ。

そして、キャリバー321はというと、

こんな感じ。

似てますね。

似てますと言うか、同じかたちをしていますね。

実はこの二つ、元となる機械が同じものなんです。

当時いろいろな時計会社にムーブメントを納品していたレマニア社の名機キャリバー2310が、

オメガではキャリバー321、ヴァシュロンではキャリバー1142と名前を変え、今も使われているのです。

もちろん基本の構造が同じというだけで違う機械なのですが、なんだか不思議な感じがしますよね。

オメガとヴァシュロンが同じムーブメントを使ってるんだ！

じゃあ160万で買えるオメガってめちゃお得じゃない？

ていうかコルヌ・ドゥ・ヴァッシュってレマニアだったんだ、などなど、

このことに対して色々な言い方ができますし、それが良いことかそうでないかも、人によると思います。

私はこのことを知った時、1940年代の機械が今でも使われていることを、

その機械がブランドも時代も越えて採用されるほど秀でていたことを、

そしてそれを作ったレマニアという会社の素晴らしさを、

歴史ではなく事実として肌で感じて、衝撃を受けたことをよく覚えています。

機械式時計の基本構造は200年変わっていないこと、

オメガの代表モデルであるムーンウォッチのムーブメントはレマニア社の血を引いていること、

レマニア社はかつて色々なブランドに機械を供給していた有名なムーブメント会社であること……という、

いわゆるセールスポイントとしての知識はもちろん持っていました。

ですが、それが現実であるという物証が現れたような気がして、ああこれって本当に現実のことなんだ、

という実感が持てたのです。

機械式時計に感じる魅力って、やっぱりこういうところにあるよなと思わされます。

ちなみに、コルヌ・ドゥ・ヴァッシュは今池店に在庫あり、

ダブルクロノグラフは現在店頭在庫はありませんが、もちろんご注文を承ることが可能です。

興味がある！という方は、ぜひ一度お話をお聞かせ頂けると嬉しいです◎

TANAKAウォッチギャラリー 久屋大通店 担当：原明日香（はらあすか）

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