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皆様こんにちは。
パネライ名古屋ブティックの大磯です。本日は”異素材”について書いてみようと思います。
早速ですが、”異素材”って何?というところですが
パネライで使用されている主な異素材は【セラミック】や【カーボテック™=カーボン】などがあります。”異”という言葉を調べると 「ことなる」「ちがう」「変わった点がある」「普通と違った」 …など
異の意味の通り、それまで一般的だった「ステンレス」や「ゴールド等の貴金属」とは違った
”金属以外の素材”や”最新の技術で作られた素材”を指すイメージワードです。異素材という言葉は、ここ10〜20年の間に時計専門誌などから普及した言葉で
定義は曖昧ですが、近年新しく登場した素材という意味から
”新素材” とか ”ハイテク素材” などとも呼ばれたりもしています。ちなみにパネライでよく使われている”セラミック”と”カーボン”
誰もがなんとなく聞いたことのあるこれらの素材ですが、
それがどの様なもので、どんな特徴があるのか?
意外と知っているようで知らない素材ではないかな?と思います。セラミック
セラミックスまたはセラミック(英語: ceramic)とは、狭義には陶磁器を指す。
※フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より一部抜粋
特徴として、硬度が高く、耐食性、耐熱性に優れて、錆や変色も起こりにくい事から
食器やキッチン、サニタリーなどの水回りの住宅設備、また航空機やロケットのエンジンなど幅広くに使用されています。ロケットエンジンと聞くと、帝国重工の財前部長の「バルブシステム…」という言葉が頭に浮かぶのですが、私だけでしょうか(笑
カーボン
炭素繊維(たんそせんい、英: carbon fiber、中: 碳纤维)は、アクリル繊維またはピッチ(石油、石炭、コールタールなどの副生成物)を原料に高温で炭化して作った繊維。
炭素繊維の長所を一言で言うと、「軽くて強い」という点である。その他にも、耐摩耗性、耐熱性、熱伸縮性、耐酸性、電気伝導性に優れる。※フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より一部抜粋
特徴として、上記にもあるように軽くて強い為、スポーツカーや競技用自転車のパーツなどに使用される事が多い素材です。
一言にカーボンと言っても、その構成している物質や製造方法も様々で、パネライの”カーボテック™”の様に、企業が独自で技術を持っているケースも多い様です。
ちなみに一般的にも”カーボン”という呼び名が浸透していますが
実は”カーボン”だけですと”炭素”という物質を指す言葉になってしまうので、
製品に使われるカーボンは、本来は”カーボンファイバー”が正しい名称です。パネライの異素材の歴史
セラミックやカーボンの大枠を、なんとなくイメージしていただけたでしょうか?
ではパネライではいつ頃からこれら異素材を時計に採用するようになったのでしょうか?
セラミックの方がより以前から使われており、
2005年頃にはセラミックケース採用したラジオミールが登場します。
その当時から、イタリア語でセラミックを意味する”Ceramica(チェラミカ)”というネーミングがついていました。カーボテック™は2015年頃にサブマーシブルを中心に採用が始まりました。
その後、ケース全体や、ベゼルなど一部にそれら異素材を使うラインナップは
年々増加傾向にあり、その特徴的な”黒いルックス”等から、人気のコレクションとなっています。
なお、セラミックに関してはカラーは比較的自在にコントロールできる事から
上のPAM00959の様に、ベゼルにブルーのセラミックを採用したモデルも展開しています。
なお、パネライは2017年には、カーボテック™ケースに
セラミックで製造したムーブメントを搭載し、その耐摩擦性等の優れた特徴から
50年間コンプリート不要!?という驚くべきコンセプトのモデルを数量限定で発表しました。
これはパネライの異素材を採用した技術の結晶ともいえるモデルですよね。時計業界と異素材
様々な特徴を持った異素材ですが
それらの素材自体は、それ以前から既に自動車や航空機、住宅、インフラなどの工業製品には既に採用されていました。異業種では既に普及していたそれら素材達を、時計業界はどの目的で採用したのでしょうか?
どのブランドが最初に異素材を採用したか?については正確に確認が出来ていませんが
凡そ2000年頃から、いくつかのブランドの高額なスポーツウォッチモデルに使われ始めた印象があります。その普及の背景には、時計用工作機械やケースサプライヤーの技術の向上、
マテリアルメーカーと時計メーカーのパートナーシップの構築など、
製造面や供給面での進歩などの理由が挙げられると思います。また、
上記しました様に、それら異素材は自動車業界や航空業界などで積極的に採用されていた事もあり、
「モータースポーツ」、「飛行機」、「宇宙」 と言ったワードと「腕時計」との親和性は、
既にこの場で”言わずもがな”というところ
それら最新鋭のテクノロジーが求められるジャンルの世界観などを
プロダクトに反映させたいといった各ブランドの意向があったと考えます。また、自動車・航空業界はビッグマネーが動く事でも有名で
2000年前後にF-1フェラーリチームで活躍したドライバーのミハエル・シューマッハーは
当時としても世界のアスリート中トップクラスの100億円近い年俸を得ていた事からも
モータースポーツ=ラグジュアリーというイメージがより強固なものになった様に思います。これらのイメージから、それら業界で採用実績のあった異素材を、
ゴールドやプラチナ同様、新たな高級素材として位置付けたいとする
時計業界としての意図があった様に感じます。異素材採用の背景を考える
時計と異素材のイメージの親和性について書いたところで
そもそも、時計業界は何故、異素材を採用する選択をしたのでしょう?モータースポーツや飛行機などの要素を製品に反映しようと思うのは自然な事だと思いますが
デザインやカラーリング等でコストを抑えて表現する事も出来たと思います。もちろん高級ブランドとして、絶えず消費者に高額な金額で商品を買って頂く為の創意工夫は必要であり、
それまで一般的だったステンレスやゴールド等とは違う、個性を出せる新たな素材を提案したいという側面もあったと思いますが
私は、それ以上にゴールドに代わる新たな高級素材が必要であったのではないかと思います。
これは、2021年12月現在のパネライの同型ムーブメントを搭載した素材別の価格分布です。
※セラミックとカーボテック™は同じ価格ですが、セラミックモデルはGMT機能付きで同価格の為、
カーボテック™を上位に配置してあります。パネライの価格分布では、”異素材”のプライスが”ステンレス以上”、”ゴールド未満”になっています。
では、この様な分布の背景を考えます。
これは、長期で見た【金】のチャートです。
2001年頃から、特に海外の金の価格が上昇しているのが分かります。
同年9月11日のアメリカ同時多発テロなどがその理由の一つと言われていますね。
※時計のブログなので、金相場のお話は控えます…。
ハイプライスの腕時計のほとんどはスイスなどヨーロッパ圏で製造されていますので、
海外の金が上がれば、当然、ゴールドケースの原材料が高騰しますよね。
原材料が上がれば、必然的に上代、つまり販売価格が上がる事になります。それまで、ステンレスの1.5倍~2倍くらいの価格に位置していたゴールドモデルが
この上昇気流に乗って、2.5倍以上となれば、ステンレスとゴールドの価格差が広がり、ミドルレンジのプライスがごっそり抜けてしまう事になります。そこで、これまでゴールドが位置していた、ステンレスの1.5倍~程度の価格分部に位置する
ゴールドに代わる高級素材を見つけ、価格帯のバランスを維持したかったのではないかと思います。実際、セラミックやカーボテック™など異素材はその製造過程において高いコストを必要とする素材であり、
価格の面とイメージの面の双方に最適な素材であったのだと思います。素材の価値•時計の価値について
原材料や製造コストがいかに高くても、
その素材に多くの人が何らかの”魅力”を感じる事が出来なければ
対価を支払うに値しませんから、高価格で売る事が出来ません。
では、ゴールドの魅力とは何でしょうか?
何といっても、安定資産としての普遍の価値でしょう。
人類史上、金が無価値となった事はなく、通貨や証券とちがい
どの国のどの企業がどの様な状態になろうとも、その価値が0になることはありません。それ故に換金性も高くなり、
基本的には同じ相場であれば、購入とほぼ同等の価格での換金が可能です。では、金と同様、ゴールドケースを採用した時計にも同じ魅力があるでしょうか?
PAM01112 ルミノール マリーナ ゴールドテック™ – 44mm
2,926,000円[税込]※2021年12月現在
こちらのモデルを一例に考えてみます。まず、こちらの重量が約140gです。
ムーブメントやサファイアガラスそれにベルトの重さの合計が大体40g位と仮定し
これに、これを2021年12月2周目の凡その金の買い取り相場が
5300円(1gあたり)をかけてみます。140 ‐ 40 = 100g
100 × 5300 = 530,000
上代に対しての換金率は2割を下回っています。
もちろんこれをどう感じられるかは人それぞれの価値観ですが、
そもそも時計から機械等をわざわざ外して金として売却する人はどれだけいるのでしょうか?
機械を無駄にしてまで、金として換金するより
時計のまま2ndマーケットへ売却するという方が殆どではないでしょうか?
また、恐らくその方法が換金率も高いはずです。ただし、2ndマーケットに関して言えば
昨今話題になっている一部ブランドの人気ステンレスモデルはゴールド以上の値が付く!
といった現象も起きている事も事実です。金は確かに市場価値がありますが
金が時計という製品になった場合 ”金” と ”ゴールドの時計” は購入後の市場価値は比例せず、
時計の場合、素材に関係なく、そのモデルにどのくらいの付加価値があるのか?
それが2ndマーケットにおける時計の市場価値となってきます。
これらの事からゴールドの時計は魅力は
素材としての金の市場価値よりも
時計の歴史の中で王侯貴族にも愛されてきた伝統的な素材であり、
その華やかで煌びやかな美しい外観があります。また、富の象徴が腕元を飾る事で得られる優越感や所有欲を満たしてくれる。などが
挙げられると思います。異素材の魅力とは?
では異素材の魅力どうでしょうか?
まず外観からは、
金属にない質感がとてもハイセンスで
現代的でスポーティーな印象です。また、どの素材も質感がマットで
反射が少ないため、写真写りが良く
SNS映えします。
反面、市場価値で見ると
セラミック相場、カーボン相場、等のチャートを私は見た事がなく
素材とての投資対象には程遠い印象ですし、そもそも異素材は再利用に向いていません。ただ、先程述べた様に 素材の価値 ≠ 時計の市場的な価格 とするのであれば
時計に市場価格の高い素材の選択は必ずしも必要とは言えません。それよりも、異素材は
金属アレルギーとは無縁であり
セラミックはキズや凹みに強く、経年と共にいつの間にか使用傷が増えていく金属とは違い
いつまでも新品の様な外観を保つことができます。
また、セラミックには菌の増殖を抑える抗菌効果もあります。またカーボンはなんといってもその圧倒的な軽さが魅力で着用時の快適さを感じる事ができます。
これらの魅力は、例えるなら、
久しぶりに車を買い替えた時の、今どきの走行性能や快適性などに覚える驚きや感動
最新家電やデバイスの予想以上の高性能ぶりに満足するなど
他人の視点や世間と比べた相対的なものではなく、「所有する事で初めて感じられる、体感型の魅力」
だと私は思います。また、スポーティーのイメージも変わりつつあります。
以前では、それらはリーズナブルやエコノミーといった言葉と結びつく事が多かったのではないでしょうか?
しかし今や、ファッションやライフスタイルのトレンドも
スポーツミックス、アウトドアミックスがキーワードとなっています。高価な衣類のイメージも
カシミアのコートや
ミンクやセーブル等の毛皮のマフラーなどから
テクノロジーによって生み出された
防水性と透湿性を兼ね備えた素材をつかったパーカーや
産地を厳選して作られたダウンジャケットなどの高級スポーツウェアにトレンドがシフトしています。また、ハイブランドが展開している様な
革靴よりも高価なスニーカーなどの
機能的で軽快で現代的なラグジュアリーアイテム
そして、それらを身に着けた高価なアウトドア体験を好む人も増えており、
異素材の時計はそれらのスタイルやシーンにとてもよくマッチします。異素材は
ゴージャスだけがラグジュアリーではなくなっている多様性の時代に相応しい、
新しい価値観を見いだせる素材だと感じます。
また、パネライの異素材には
本項でご紹介したセラミック、カーボテック™の他にも
3Dプリンターにより製造されたDMLSチタンをケースに採用した超軽量モデルなど
魅力的な製造プロセスを持ったモデルが沢山あります。質感や重量など、異素材には視覚では体験できない魅力があります。
異素材に少しでも興味をお持ち頂けましたら
是非、パネライ名古屋ブティックで体験頂けると嬉しいです。
触ってみるだけでも歓迎です。最後までお読みいただきありがとうございました。
大磯
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