クロノメーターとCOSC：時計の精度を証明する称号とその裏側

クロノメーターとは、単に「正確な時計」を指す言葉ではありません。
厳しい検査基準をクリアし、その精度を公式に認められた時計だけに与えられる称号です。
時計技術が発展した現代においても、クロノメーター認定を受けることは容易ではなく、時計メーカーの技術力と品質へのこだわりを象徴する称号と言えるでしょう。

クロノメーターの歴史は、18世紀の大航海時代まで遡ります。
当時、正確な経度を知ることは安全な航海に不可欠でしたが、波の影響を受ける船上では正確な時刻を計測することが困難でした。
そこで開発されたのが、高精度な船舶用の時計「マリンクロノメーター」です。
その後の時計技術の発展と共に、腕時計にもクロノメーターの概念が導入され、現在に至ります。

では、クロノメーターはどのように認定されるのでしょうか。
その役割を担うのが、COSC（スイス クロノメーター検定協会）です。
COSCはスイス政府の監督下にある中立機関であり、時計のムーブメントに対して、中立的な立場で精度検査を実施しています。

COSC（スイス クロノメーター検定協会）の検査は、15日間という長期間に渡り、様々な角度や温度環境下で実施されます。

ここでは、COSCが定める5つの主要な検査項目とその基準値、そして検査の厳しさを解説します。

1. 平均日差: -4～+6秒/日
   • 時計の精度を示す最も基本的な指標。1日あたりの進み遅れの平均値を測定します。
   • COSCの基準は、一般的なクォーツ時計の月差±15秒と比較しても非常に厳しく、高精度であることを示しています。
2. 平均日較差: 2秒/日以内
   • ある日と別の日の日差の差を測定し、時計の安定性を評価します。
   • この基準値は、時計が常に安定した精度を保っていることを証明しています。
3. 最大日差: 10秒/日以内
   • 15日間の検査期間中の最大の日差を測定します。
   • 厳しい環境下でも、大きく精度が狂わないことを保証する指標となります。
4. 温度係数: 0.6秒/℃以内
   • 異なる温度環境下（8℃、23℃、38℃）での精度変化を測定します。
   • 温度変化による精度の影響が最小限に抑えられていることを示しています。
5. 姿勢差: -6～+8秒/日
   • 5つの姿勢（文字盤上、文字盤下、竜頭左、竜頭上、竜頭下）で測定した日差の差を評価します。
   • 日常生活で起こりうる様々な姿勢変化による精度の影響を最小限に抑えていることを証明しています。

これらの厳しい検査基準をクリアしたムーブメントのみが、
COSC認定クロノメーターの称号を得ることができ、その精度の高さを保証されます。

COSCの検査をクリアし、クロノメーター認定を受けた時計は、その信頼性と品質の高さを証明されます。
これは、時計を選ぶ上での重要な指標となり、同時に時計の付加価値を高めることにも繋がります。

• オメガ：クロノメーター認定の筆頭とも言えるブランドオメガはCOSC認定後METS認定を行うという徹底ぶりです。
  アクアテラ 150M マスタークロノメーター 41mm  品番：220.10.41.21.01.002
• ブライトリング：100％クロノメーター認定を公言している代表的なブランドですね。
  中でも自社キャリバー搭載モデルは一層おすすめモデルです。
  ナビタイマー B01 クロノグラフ 43 品番：AB0138211B1A1
• ボーム＆メルシエ：自社キャリバーボーマテッィク搭載モデル
  クリフトン　ボーマティック 品番：M0A10518
• ノルケイン：ケニッシ社と共同開発したムーブメントに搭載
  インディペンデンス 42mm JP ブラックスクラッチ　品番：NN3000S03A/BJ301/102SI

クロノメーターとCOSCは、時計の歴史と共に進化を続けてきました。
近年では、COSCの基準を上回る、より高精度な規格も登場しており、時計メーカー各社は技術革新を続けています。今後も、クロノメーターは時計の精度を象徴する称号として、時計愛好家たちを魅了し続けることでしょう。

この記事を書いた人

最後まで読んでくださりありがとうございます。
TANAKA久屋大通店の大西です。
腕時計はお客様にとっての生涯のパートナー。
末永くご愛用頂くために一生懸命サポートいたします。
ご質問やご不明な点がございましたら
お気軽にお声がけくださいませ。