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2025.02.10
ブライトリングのフラッグシップ「ナビタイマー」や「クロノマット」に搭載される “キャリバー01” は如何にして誕生したのか?:革新的なクロノグラフムーブメントの開発秘話と今日までの発展の歴史
ブライトリングのフラッグシップ「ナビタイマー」や「クロノマット」に搭載される “キャリバー01” は如何にして誕生したのか?:革新的なクロノグラフムーブメントの開発秘話と今日までの発展の歴史
はじめに:ブライトリングとクロノグラフ – 深い歴史を持つブランドの挑戦
ブライトリング。
時計愛好家ならずとも、その名を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。1884年、レオン・ブライトリングによってスイスに創業されたこのブランドは、1世紀以上にわたり、高精度なクロノグラフ時計の開発と製造において、パイオニアとしての地位を確立してきました。
航空業界との密接な関係、そして数々の名作を生み出してきた歴史は、まさに「時計史における生きた伝説」と呼ぶにふさわしいでしょう。ブライトリングの名声を語る上で欠かせないのが、クロノグラフへの貢献です。
クロノグラフとは、時刻を計測できる複雑な機構を持つ時計を指します。
ブライトリングは、1915年に腕時計型のクロノグラフを発表、1934年には現在のクロノグラフの原型となる2つのプッシュボタンを持つモデルを発表するなど、クロノグラフの歴史にその名を刻んできました。しかし、20世紀後半、クォーツショックの波はブライトリングにも襲いかかります。
機械式時計の需要が低迷する中、ブライトリングは外部のムーブメントメーカーに頼らざるを得ない状況にありました。高品質なETA社のムーブメントをベースに改造を加えた時計を製造していましたが、真のマニュファクチュールとなるためには、自社製ムーブメントの開発が不可欠でした。そして21世紀、ブライトリングは大きな決断を下します。
それは、自社開発による完全自社製クロノグラフムーブメント「キャリバー01」の開発でした。キャリバー01 開発の決断 – 真のマニュファクチュールへの道
2000年代初頭、機械式時計が見直され始め、高級時計市場は活況を取り戻しつつありました。
しかし、ブライトリングは、この好機を単なる売上回復のチャンスとは捉えませんでした。
長年、外部調達に頼っていたムーブメントを自社で開発・製造することで、真のマニュファクチュールとして、時計製造の全てを自社で完結させるという、ブランドの未来をかけた壮大な挑戦を決意したのです。当時、ブライトリングはETA社製の高品質なムーブメントに独自のチューニングを施し、腕時計を製造していました。
しかし、真にブランドの独自性を表現し、時計製造の全てを掌握するためには、自社製ムーブメントが不可欠だと考えたのです。自社製ムーブメント開発は、多大な時間、費用、そしてリスクを伴う、困難な道のりです。
しかし、ブライトリングは、自社開発こそが、ブランドの独自性を確立し、真の高級時計ブランドとして認められるための唯一の道だと信じていました。それは、創業以来、革新的な技術に挑戦し続けてきたブライトリングのDNAに刻まれた、揺るぎない信念でもありました。そこで、2004年にブライトリングは、スイス時計産業の中心地であるラ・ショー・ド・フォンに、「クロノメトリー」という新たなムーブメント工場を設立しました。
Breitling Chronométrie. (PPR/Breitling)
最高の技術者、時計師たちを集め、キャリバー01の開発プロジェクトをスタートさせます。
開発チームには、当時ブライトリングの副社長で、ムーブメント開発のエキスパートであるジャン=ポール・ジラルダン氏などを始め、各分野の精鋭が集結しました。
彼らは、「妥協を許さず、最高のパフォーマンスと信頼性を追求する」という強い意志のもと、プロジェクトに情熱を注ぎ込みました。それは、単なるムーブメント開発プロジェクトではなく、ブライトリングの未来をかけた、壮大な挑戦の始まりでした。
キャリバー01 開発の舞台裏 – 技術者たちの挑戦と情熱
キャリバー01の開発は、ブライトリングの技術者たちの飽くなき挑戦と情熱の結晶でした。
彼らは、高精度、高耐久性、そして美しい仕上げを兼ね備えた、ブライトリングの名に恥じない、まさに「究極のクロノグラフ・ムーブメント」を目指し、日夜研究開発に没頭しました。開発チームの前に立ちはだかったのは、数々の技術的課題でした。
その中でも、最大の難関の一つが、クロノグラフ機構の設計だったのです。
ブライトリングは、高級クロノグラフの証である「コラムホイール」と、動力伝達のロスを抑え、高精度なクロノグラフ計測を実現する「垂直クラッチ」の採用を当初から決定していました。
しかし、これらの複雑な機構を、小型化、高精度化、そして量産化することは、容易ではありませんでした。コラムホイールは、クロノグラフのスタート、ストップ、リセット操作を制御する、いわばクロノグラフの心臓部です。
その複雑な形状と、ミクロン単位の精度が求められる加工は、高度な技術力を要しました。
また、垂直クラッチは、従来の水平クラッチに比べ、部品点数が多く、組み立てが複雑なため、量産化には、新たな製造技術の開発も必要でした。開発チームは、コンピューターによる3Dモデリングやシミュレーションを駆使し、設計を何度も見直し、試作と改良を繰り返しました。
部品の材質、形状、加工方法など、あらゆる要素を検討し、最適な組み合わせを追求しました。
その過程で、なんと100を超えるプロトタイプ・ムーブメントが製作されたと言われています。また、ブライトリングは、キャリバー01の開発にあたり、「最高の素材」と「最高の技術」を融合させることにこだわりました。部品の一つ一つに、耐摩耗性、耐腐食性に優れた素材を選び、熟練の時計師たちの手作業による丁寧な仕上げを施しました。
そして、5年におよぶ歳月と、技術者たちのたゆまぬ努力の結果、キャリバー01は、約70時間のパワーリザーブ、COSC(スイス公式クロノメーター検定協会)公認クロノメーター取得など、当時のクロノグラフムーブメントとしては最高レベルの性能を達成することに成功しました。
2009年のバーゼルにて発表された完全自社開発・製造による、高精度、高耐久性、そして美しい仕上げを兼ね備えたこのムーブメントは、時計業界に大きな衝撃を与えました。
それは、ライトリングの技術力の高さを証明するだけでなく、時計史に新たな1ページを刻む、革新的なムーブメントの誕生として時計業界から大きな注目を集めたのでした。
専門誌からは、「ブライトリングの歴史に新たな章を刻む傑作」「ETA一強時代への挑戦状」などと絶賛され、時計愛好家たちからも、その性能と美しさに惜しむことのない賞賛が送られました。
キャリバー01の登場は、ブライトリングが真のマニュファクチュールとしての地位を確立したことを意味するだけでなく、高級時計業界全体にとっても、大きな転換点となりました。
キャリバー01開発のポイント
- クロノグラフ機構の改良: 従来のクロノグラフ機構を大幅に改良し、よりスムーズで正確な操作を実現
- 部品の最適化: 部品の素材や形状を徹底的に見直し、耐久性と信頼性を向上
- 製造プロセスの革新: 最新の製造技術を導入し、高品質なムーブメントを効率的に生産できる体制を構築しました。
キャリバー01の特徴:革新性と実用性の融合
キャリバー01は、以下の特徴を持っています。
- コラムホイール式クロノグラフ: スムーズな操作感と高い信頼性を実現しています。
- 垂直クラッチ: クロノグラフ作動時の針飛びを防止し、より正確な計測を可能にしました。
- モジュール構造: 部品の交換や修理が容易になり、メンテナンス性を向上させました。
- パワーリザーブ70時間以上: 長時間の駆動が可能となり、実用性を高めました。
キャリバー01は、革新的な技術と高い実用性を兼ね備えた、ブライトリングの自信作と言えるでしょう。
キャリバー01 搭載モデル – フラッグシップから個性派まで、ブライトリングの進化を牽引
ブライトリングが満を持して発表した自社製ムーブメント「キャリバー01」。その高い性能と汎用性は、ブライトリングの時計づくりの可能性を大きく広げ、様々なコレクションの幅広いモデルに搭載されることになりました。
まず、その栄誉を授かったのは、ブライトリングのフラッグシップモデルである「クロノマット」と「ナビタイマー」でした。1984年の誕生以来、スポーティで高級感あふれるデザインで、プロフェッショナルのための計器として進化を遂げてきたクロノマット。
そして、1952年の誕生以来、パイロットウォッチの代名詞として、回転計算尺を搭載した機能美あふれるデザインで、航空界のプロフェッショナルから愛され続けてきたナビタイマー。
この二つのフラッグシップモデルに、高精度・高性能なキャリバー01が搭載されたことは、ブライトリングの技術力の高さを象徴する出来事であり、時計業界に大きな衝撃を与えました。
その後も、キャリバー01は、ブライトリングの様々なコレクションのモデルに搭載されていきます。
例えば、クラシックとモダンが融合したエレガントなドレスウォッチ「プレミエ」。
200m防水を備えた、プロフェッショナルのためのダイバーズウォッチ「スーパーオーシャン・ヘリテージ」。
そして、航空計器としてのDNAを受け継ぎ、現代のパイロットのニーズに応える高機能を搭載した「アベンジャー」、クロノマットの進化系として、スポーティさとエレガントさを兼ね備えた「スーパー クロノマット」など、その搭載モデルは多岐にわたります。
キャリバー01は、スポーティなモデルからエレガントなモデルまで、幅広いデザインの時計に搭載することが可能となり、ブライトリングの時計づくりの可能性を大きく広げました。
これは、キャリバー01が、単に高性能なムーブメントというだけでなく、ブライトリングの時計づくりの哲学を体現する、まさに「心臓部」としての役割を担っていることを示しています。そして、キャリバー01の進化は、ブライトリングの時計の進化そのものとも言えます。今後も、キャリバー01を搭載した、革新的で魅力的なモデルが登場することが期待されます。
キャリバー01の未来 – ブライトリングの進化は続く
キャリバー01は、ブライトリングの技術力の結晶であり、ブランドのアイデンティティを確立した立役者と言えるでしょう。
その誕生は、ブライトリングが真のマニュファクチュールとして、時計業界の頂点に立つという揺るぎない決意表明でした。
そして、キャリバー01は、ブライトリングの未来を担う重要な資産として、進化を続けながら、更なる高みを目指しています。ブライトリングは、キャリバー01の開発によって培われた技術力と、その過程で得られた経験を活かし、新たなムーブメントの開発や既存モデルの改良を積極的に行っています。
例えば、キャリバー01をベースに、クロノグラフ機能をさらに進化させ、GMT機能を搭載したキャリバー04、パーペチュアルカレンダー機能を追加したキャリバー19など、高機能かつ実用的なムーブメントを次々と世に送り出しています。
これらのムーブメントは、クロノマット、ナビタイマー、スーパーオーシャンといった、ブライトリングを代表するコレクションに搭載され、時計愛好家たちの心を掴んで離しません。ブライトリングは、伝統を尊重しながらも、常に革新を続け、時計業界をリードしてきました。
キャリバー01は、ブライトリングの時計に対する情熱、技術力、そして伝統を象徴する存在です。これからもブライトリングは、キャリバー01と共に、時計史に新たな伝説を刻み続けることでしょう。まとめ:キャリバー01 – ブライトリングの技術力の結晶
キャリバー01は、ブライトリングが真のマニュファクチュールとなるために、そしてブランドの未来を切り開くために、開発された、まさに「夢のムーブメント」でした。その開発には、技術者たちのたゆまぬ努力と、ブライトリングの時計に対する熱い情熱が込められています。
キャリバー01の登場は、ブライトリングにとって、そして時計業界全体にとって、大きな転換点となりました。高精度、高耐久性、そして美しい仕上げを兼ね備えたキャリバー01は、ブライトリングの時計を、単なる「道具」から、「芸術品」へと昇華させました。
そして今、キャリバー01は、ブライトリングの時計づくりの根幹を支える柱として、その存在感を増しています。ブライトリングは、キャリバー01のDNAを受け継ぎながら、革新的な技術や素材を取り入れ、時計の新たな可能性を追求し続けています。
これからもキャリバー01は、ブライトリングのフラッグシップムーブメントとして、進化を続け、世界中の時計愛好家を魅了し続けることでしょう。
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