【名門の系譜】半世紀以上愛される傑作「ブランパン フィフティファゾムス」伝説のダイバーズウォッチ誕生秘話

深く、静寂な海の底。そこには、太陽の光も届かぬ未知の世界が広がっています。人類にとって、長らく神秘のベールに包まれていた深海への挑戦を可能にしたものの一つが、ダイバーズウォッチです。数あるダイバーズウォッチの中でも、真のレジェンドと呼ぶにふさわしいのが、ブランパン フィフティファゾムス。

1953年、世界初のモダンダイバーズウォッチとして誕生したフィフティファゾムスは、その名を冠する「50ファゾムス」＝約90 m（1ファゾム＝約1.8 m）という、当時の時計の常識を覆す驚異の防水性能を誇る時計でした。その堅牢なケースと高精度なムーブメントは、過酷な深海という環境において、ダイバーたちの命を預かる重要な役割を担ったのです。

フィフティファゾムスは、単なる時計を超えた存在として、数々の冒険家や海軍特殊部隊に愛され、歴史にその名を刻んできました。その伝説は、半世紀以上を経た現代においてもなお、色褪せることなく、進化を続けています。

フィフティファゾムスの誕生を語る上で、決して欠かすことができないのが、その創造主であるブランパンの輝かしい歴史です。ブランパンは、1735年、スイスのジュラ山脈に抱かれた静かな村、ヴィルレにて、ジャン＝ジャック・ブランパンによって設立されました。自然豊かな山岳地帯で育まれたその精神は、創業から今日に至るまで、脈々と受け継がれています。

ブランパンは、現存する時計ブランドとしては世界最古の歴史を誇ります。280年以上の長きにわたり、時計製造の伝統を守り続け、常に革新的な技術に挑戦し続けてきました。その歴史は、まさに時計史そのものと言えるでしょう。

創業以来、ブランパンは一貫して、伝統的な時計製造技術と革新的な精神を融合させた、最高峰の機械式時計を生み出し続けてきました。熟練の時計職人たちによって受け継がれてきた、伝統的な手作業による組み立て技術は、現代の最新技術と融合し、他に類を見ない精巧で美しい時計を生み出しています。

その技術力は、複雑な機構を搭載したコンプリケーションウォッチから、驚くほど薄い超薄型ムーブメントまで、多岐に渡ります。例えば、永久カレンダー、トゥールビヨン、ミニッツリピーターといった複雑機構を搭載した時計は、時計愛好家たちの憧れの的となっています。また、超薄型ムーブメントは、その薄さからは想像もつかないほどの高い精度と耐久性を誇り、ブランパンの技術力の高さを証明しています。

ブランパンの時計は、単なる時間を計る道具ではなく、芸術作品と呼ぶにふさわしい美しさを持っています。その美しいデザインは、時計製造の長い歴史の中で培われた、伝統的な美意識と、現代的なセンスが融合したものです。

特筆すべきは、ブランパンが創業以来、一度もクォーツ式時計を製造したことがないという事実です。これは、真の時計とは何かを常に問い続け、伝統的な機械式時計の価値を守り続けるという、ブランパンの揺るぎない哲学の表れと言えるでしょう。機械式時計は、歯車やゼンマイといった機械部品の複雑な組み合わせによって、時間という目に見えないものを表現する、まさに人間の英知の結晶です。ブランパンは、その魅力を信じ、未来へと継承していくことに情熱を注いでいます。

こうした時計製造への真摯な姿勢は、他の高級時計ブランドとは一線を画す、ブランパンの大きな魅力となっています。フィフティファゾムスは、まさにその哲学と技術力の結晶と言えるでしょう。それは、深海への挑戦という人類の夢を叶えるために生まれた、最高の時計なのです。

ヴィルレにあるブランパンの工房

1953年、ブランパンが生み出したフィフティファゾムスは、単なる新作時計の発表にとどまらず、人類の深海への挑戦を力強く後押しする、画期的な出来事となりました。

1950年代、第二次世界大戦の終結に伴い、世界は荒廃から立ち直り、復興へと歩みを進めていました。同時に、人々の心には、未知の世界への探求心が再び芽生え始めます。海洋開発やレジャーダイビングが盛んになり、冒険家たちは、神秘のベールに包まれた深海へと挑み始めたのです。

しかし、当時のダイバーズウォッチは、防水性能が低く、過酷な環境下での使用に耐えうる信頼性に欠けるものがほとんどでした。ダイバーたちは、常に時計の故障と隣り合わせという危険な状況に身を置いていたのです。

当時ブランパンのCEOであったジャン＝ジャック・フィスターは、自身がダイバーで時間を忘れるほど潜水に熱中し遭難した経験を持ち、十分な堅牢性、信頼性、耐水性、視認性を備え、水中で頼れるパートナーとなる時計を製作することを夢見ていました。

南仏のスキューバダイビングクラブ「クラブ アルパン スマラン（Club alpin sous-marin）」での

ダイビングバケーション中のジャン＝ジャック・フィスター　

1950 年代初頭、フランス海軍ではロベール（通称「ボブ」）・マルビエ大尉とクロード・リフォ中尉という二人の将校が潜水戦闘部隊の編成を担っていました。彼らはダイバーたちにとって欠かせない器材のひとつである時計の選考を行うこととなり、パリで市販されていた様々な時計の性能をテストします。ところが、その結果は惨憺たるものでした。小さすぎて文字盤がほとんど読み取れず、ケースは防水とは程遠い代物だったからです。

スイスでジャン＝ジャック・フィスターに会った将校たちは、試験用にフィフティ ファゾムスのサンプルを持ち帰りました。その後、フィフティ ファゾムスは見事試験に合格。フランス海軍の公式ダイバーズウォッチとして採用されることとなります。

フィフティファゾムスは、それまでのダイバーズウォッチの常識を覆す、革新的な機能を備えていました。水深91.45 mという、当時としては驚異的な防水性能を誇るスクリューバックケース、潜水時間を正確に計測するための回転ベゼル、暗闇の深海でも時刻を確実に読み取れる夜光塗料など、そのすべてが、プロのダイバーの要求に応えるために、妥協を排して開発されました。

フィフティファゾムスの誕生は、単に高性能なダイバーズウォッチが生まれたというだけではありませんでした。それは、時計史における革命であり、同時に、人類の深海探査における新たな章の始まりでもあったのです。

1953年に誕生した初代「フィフティファゾムス」　

フィフティファゾムスの最大の特徴は、何と言ってもその圧倒的な防水性能です。当時としては驚異的であった水深91 mという防水性能は、まさに未知の領域への挑戦であり、ブランパンの技術力の粋を集めて実現されました。

フィフティファゾムスには、その驚異的な防水性能を実現するために、様々な革新的な技術が導入されています。

まず、ケース構造には、裏蓋をねじ込み式にすることで高い気密性を確保する、スクリューバック方式を採用しました。これは、当時の時計製造においては画期的な技術であり、フィフティファゾムスの防水性能を飛躍的に向上させる鍵となりました。

さらに、リューズやベゼルにも、二重のパッキンを使用するなど、徹底した防水機構を施しました。これにより、水深91 mという高圧環境下でも、あらゆる方向からの水の浸入を防ぎ、時計内部のムーブメントを守ることが可能となりました。

また、潜水時間を計測するための回転ベゼルには、誤作動を防ぐため、反時計回りのみ回転する仕組みを採用しました。これは、ダイビング中に誤ってベゼルを回転させてしまい、実際の潜水時間よりも短い時間が表示されることで、ダイバーが酸素不足に陥る危険性を回避するための、安全への配慮から生まれた独創的な機構です。

さらに、暗闇の深海でも時刻を確実に確認できるように、インデックスや針には、当時としては最新鋭の夜光塗料を採用しました。視認性の向上は、ダイバーの安全を確保する上で最も重要な要素の一つです。ブランパンは、妥協を許さず、当時の最高技術を駆使することで、この課題をクリアしました。

デザイン面においても、フィフティファゾムスは、機能美を追求したシンプルながらも力強いフォルムが特徴です。大型のケースは、高い視認性を確保するとともに、堅牢性も高めています。太く見やすいインデックスと針は、一目で時刻を認識することを可能にし、暗所での視認性にも優れています。そして、頑丈なブレスレットは、過酷な環境下でも、時計を腕にしっかりと固定します。

フィフティファゾムスのデザインは、決して華美ではありません。しかし、そこには、過酷な環境下でも、正確な時刻表示を可能にするという、ダイバーズウォッチとしての本質が、力強く表現されています。それは、まさに機能美の結晶と言えるでしょう。

フィフティファゾムスは、革新的な技術と洗練されたデザインが見事に融合した、まさにブランパンの技術力の結晶です。そして、その誕生は、時計史に燦然と輝く金字塔として、永遠に語り継がれることでしょう。

1953年の誕生以来、フィフティファゾムスは、時代の変化や技術の進歩に合わせて、常に進化を続けてきました。その歴史は、まさにダイバーズウォッチの進化の歴史そのものと言えるでしょう。

フィフティファゾムスは、フランス海軍、アメリカ海軍、そしてドイツ連邦軍の精鋭部隊「コンバットスイマー」など、世界各国の軍隊で正式に採用されました。その高い信頼性と性能は、過酷な任務を遂行するプロのダイバーたちから絶大な支持を得ることになります。

1956年、ブランパンは、フィフティファゾムスのさらなる進化に挑戦します。ケースサイズを大型化し、より高い防水性能を実現した「Bathyscaphe（バチスカーフ）」モデルを新たに発表しました。バチスカーフは、深海潜水艇を意味する言葉であり、その名にふさわしい、圧倒的な防水性能を誇っていました。

1956年に誕生した初代「バチスカーフ」

さらに、1970年代には、当時としては画期的であったチタンケースを採用したモデルを発表します。チタンは、軽量でありながら強度と耐食性に優れており、ダイバーズウォッチの素材として最適でした。ブランパンは、常に時代の最先端の技術をいち早く採用することで、フィフティファゾムスの進化を続けていったのです。

その後も、ムーブメントの改良や新素材の採用など、フィフティファゾムスの進化は止まりません。2003年には、誕生50周年を記念して、初代モデルを忠実に再現した復刻版が発表され、世界中の時計愛好家から大きな話題となりました。初代モデルへのオマージュを込めた復刻版は、フィフティファゾムスの歴史と伝統を色濃く反映した、まさに「伝説の再来」と言えるモデルでした。

現代においても、フィフティファゾムスは、ブランパンのフラッグシップモデルとして、その地位を揺るぎないものにしています。最新の技術を駆使した高性能ムーブメントを搭載し、さらに進化した防水性能、そして洗練されたデザインは、世界中の時計愛好家を魅了し続けています。

フィフティファゾムスは、単なるダイバーズウォッチではありません。それは、常に進化を続けることで、時代を超越した価値を創造してきた、まさに「生ける伝説」と呼ぶにふさわしい時計なのです。

現代のフィフティファゾムスは、初代モデルのDNAをしっかりと受け継ぎながらも、最新の技術と素材を惜しみなく投入することで、さらなる進化を遂げています。それは、単なる復刻版ではなく、伝統と革新を見事に融合させた、進化し続けるダイバーズウォッチの象徴と言えるでしょう。

その心臓部には、ブランパンが誇る高精度な自社製ムーブメントを搭載しています。耐衝撃性、耐磁性に優れたフリースプラングバランスを採用し、さらに、高い耐磁性能を誇るシリコン製ヒゲゼンマイを採用するなど、最新の技術革新が惜しみなく投入されています。これにより、フィフティファゾムスは、過酷な環境下でも、常に正確な時を刻み続けることを可能にしています。

防水性能も、現代のダイビングシーンに対応するため、300 m防水を標準装備としています。これは、レジャーダイビングはもちろんのこと、プロフェッショナルな深海潜水にも耐えうる、高い防水性能です。さらに、ヘリウムガスを自動的に排出するヘリウムエスケープバルブを搭載したモデルもラインナップされており、飽和潜水にも対応可能です。

デザイン面においても、初代モデルのシンプルで力強いフォルムや、丸みを帯びたボンベ型のサファイアガラスで覆われた逆回転防止ベゼルが継承されています。

「バチスカーフ」モデルには現代的なエッセンスが加えられています。傷つきにくく、美しい輝きを放つセラミック素材を採用したベゼルや、暗闇でも優れた視認性を発揮する夜光塗料を施したインデックスなど、高級感と機能性を兼ね備えたデザインが魅力です。

素材にもこだわりが感じられます。チタン、セラミック、ゴールドなど、高級時計にふさわしい素材を厳選し、高度な加工技術によって、美しいフォルムと優れた耐久性を実現しています。

フィフティファゾムスは、単なるダイバーズウォッチではありません。その歴史と伝統、そして卓越した技術力が凝縮された、まさにブランパンの象徴と言える存在です。それは、時を超えて愛され続ける、真のマスターピースと呼ぶにふさわしいでしょう。

フィフティファゾムスは、誕生以来、深海探査の世界とも密接な関係を築いてきました。それは、単なる偶然ではなく、深海への飽くなき情熱という、フィフティファゾムスと探検家たちの共通点によって結ばれた必然の縁と言えるでしょう。

1960年代、フランス領ポリネシアの海洋学者であり、映画監督としても世界的に著名なジャック＝イヴ・クストーは、革新的な潜水技術と海洋生物の生態を捉えたドキュメンタリー映画「沈黙の世界」を制作しました。その手腕は世界中の人々を魅了し、海洋探査ブームの火付け役となりました。クストー率いる伝説の調査船カリプソ号のクルーたちは、過酷な深海という環境下で、フィフティファゾムスを信頼のパートナーとして共に過ごしたのです。

フィフティファゾムスは、クストーの冒険を陰ながら支え、人類が初めて目にする深海の神秘を記録する、まさに歴史の証人となりました。その信頼性と耐久性は、過酷な環境下でも、正確に時を刻み続けることで、クルーたちの安全な潜水活動に貢献しました。

近年では、ブランパンは、海洋探検家であり、水中写真家としても著名なローラン・バレスタとのパートナーシップを締結し、新たなプロジェクトを支援しています。このプロジェクトは、新型コロナウイルスの世界的パンデミックによる人間活動の停止が海生脊椎動物および無脊椎動物の生息数に与えた影響を調査するものであり、フィフティファゾムスは、その活動を支える重要なツールとして活躍しています。

バレスタは、フィフティファゾムスを腕に、世界中の海を探検し、貴重な海洋生物の生態を記録しています。彼の活動は、海洋環境問題の深刻さを世界に伝えるとともに、未来の世代へ豊かな海を引き継ぐために、今、私たちが行動を起こすことの重要性を訴えかけています。

フィフティファゾムスは、単なる時計を超え、人類の深海への挑戦を支え、その記録を刻み続ける、かけがえのないパートナーなのです。そして、その絆は、これからも未来へ向かって、さらに深く、強く、結びついていくことでしょう。

フィフティファゾムスを選ぶということは、単に高性能なダイバーズウォッチを手に入れる以上の意味を持ちます。それは、時計史に燦然と輝く伝説を共有し、その哲学と情熱に触れることを意味するのです。

ブランパンのオーナーは、その圧倒的な存在感と、時を超えて愛される普遍的なデザインに魅了されます。彼らは、フィフティファゾムスを身につけることで、未知の深淵への挑戦を恐れなかったパイオニアたちの精神に触れ、その情熱を受け継ぐことができるのです。

フィフティファゾムスの歴史は、そのままダイバーズウォッチの歴史と重なります。1953年に誕生した初代モデルは、当時としては画期的な、高い防水性と耐久性を備え、プロフェッショナルなダイバーたちの信頼を勝ち取りました。その革新性と信頼性は、現代のフィフティファゾムスにも脈々と受け継がれており、オーナーは、その歴史の重みと、進化し続ける技術力の結晶を、肌で感じることができるのです。

フィフティファゾムスは、人生の大切なパートナーとして、世代を超えて受け継がれていくにふさわしい、真の逸品と言えるでしょう。それは、時を経ても色褪せることのない、普遍的な価値と魅力を備えているからです。

フィフティファゾムス。それは、単なるダイバーズウォッチではなく、時計史に燦然と輝く、真の傑作です。その歴史、技術、デザイン、そして哲学は、時を超えて受け継がれ、未来永劫、人々を魅了し続けるでしょう。

1953年の誕生以来、フィフティファゾムスは、常に進化を続けながら、ダイバーズウォッチの限界に挑戦し続けてきました。その飽くなき探求心と、妥協を許さないクラフツマンシップは、数々の伝説的なモデルを生み出し、時計愛好家を魅了してやみません。

フィフティファゾムスの魅力は、その卓越した性能だけにとどまりません。シンプルながらも洗練されたデザインは、時代を超越した美しさを持ち、あらゆるシーンで身につける人の個性を引き立てます。それは、まるで、長年使い込まれたダイビングウォッチのように、使い込むほどに愛着が増し、自身の歴史を刻んでいく、かけがえのないパートナーとなるでしょう。

もしあなたが、本物の時計との出会いを求めているならば、是非、フィフティファゾムスを手にとってみてください。その重厚な質感、精緻な作り込み、そして時を刻む力強い音色は、きっとあなたの心を揺さぶるでしょう。

そして、フィフティファゾムスが体現する、深海への冒険心、未知への挑戦、そして、自然への畏敬の念を感じた時、きっと、あなたの人生観さえも変わるような、衝撃的な体験をすることになるでしょう。

フィフティファゾムスは、あなたの人生を豊かに彩る、最高の相棒となってくれるに違いありません。それは、単なる時間を計る道具ではなく、あなたと共に人生を歩み、かけがえのない時間を刻んでいく、かけがえのないパートナーとなるでしょう。

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